船井総研グループでは、役職関係なく「さん付け」で呼び合う文化があります。
新入社員が社長を呼ぶときもみんな「さん付け」です。
この独自の文化がいかに社員同士の尊重と信頼を築き上げる重要な役割を果たしてきたのか、1983年に新卒で入社した三浦さんにお聞きしてみました!
氏名:三浦康志
入社:1983年 4 月 1 日(新卒採用)
社名:株式会社船井総合研究所 上席コンサルタント
出身大学・学部:愛知大学大学院 経営学研究科
あらゆる業種・業態・組織の「グレートカンパニー化支援」をコンサルティングテーマとする。その主な具体策は、人財開発、人財育成。 自ら組織を運営、活性化し、業績を改善できる自律的な人財づくりを、様々な観点での研修やコンサルティングで支援する。国内視察研究会主宰。著書に、『ウォルマートの新人間主義経営』、『ありがとうノート』(ビジネス社刊)がある。
入社当初の驚きと感激
新入社員としてのスタートを切った1983年から、私は先輩社員に「三浦さん」と呼ばれてきました。ミーティングでも「三浦さんはどう思いますか?」と新入社員の私に意見を求められることも多く、非常に感激したことを覚えています。
当時、他の多くの企業では新入社員に対しては敬称を付けずに呼ぶのが一般的でしたので、個人を尊重してくれる文化があるのだと感じました。そしていい会社に入れて良かったと思いました。先輩からそのように扱ってもらえるから、自分も誰に対しても同じように対応しようと思い、同期や後輩、中途入社で後から入社する人たちのことも「さん付け」で呼ぶようにしていました。今思い返せば、当時から非常に珍しい社風の会社でした。
自然に広がった「さん付け」文化
興味深いことに、この「さん付け」の文化は、会社のルールに基づいたものではありませんでした。創業メンバーの一人である泉田豊彦さんが、役職や階級で呼ぶよりストレスが無く心地よいと感じたため自主的に始めたものだったようです。そしてこの一人の強い思いが自然と社内に広がっていきました。クライアントに対しても「〇〇社長」とは呼ばずに、「〇〇さん」と呼ぶように意識されていました。それが若手社員に広まり、自然と社内の仕事観として醸成され、習慣化し、最終的には会社の文化として浸透していったのです。
「さん付け」を強要することは一度もありませんでした。ルールでそうしようと決まっていたわけではなく、一人の思いが伝搬して社風にまで至ったことは、特筆すべき点だと思います。
「さん付け」文化がもたらす効果
大きな事例として、デンマークの文化を挙げることができます。デンマークなどの北欧では、多くの場面で老若男女や階級に関係なくファーストネームで呼び合うことが一般的です。これは日本での「さん付け」に近いもので、法律ではなく文化・習慣からくるものです。
私自身、「さん付け」で呼ばれることで感じたのは、何よりもまず尊重されているという心地良さでした。デンマークは国民幸福度ランキングでも非常に高い位置を占めています。もちろんそれ以外の要素もありますが、このような尊重し合う文化が根底にあるのではないかと思っています。
船井総研グループでも、この文化が社員満足度を高める一因となっていると感じています。
私たちがこれから目指すもの
私は就職活動中の大学生に対して、面接に赴く際には、必ず「御社では社員同士でどのように呼び合っていますか?」と質問するようアドバイスしています。
「さん付け」で呼び合っている企業であれば、それはきっと良い企業です。逆に、年齢や役職によって呼び分ける会社は正直お勧めしません。
ただ、社内では浸透しているこの文化も、クライアントとのやり取りにおいては完全には浸透しておらず、「社長」、士業や医療の業界では「先生」と呼ぶ習慣が残っています。これらの業界でも「さん付け」文化を広めることが私たちの重要なミッションであると思っています。そしてそれはルールとして導入するのでは、自然に慣習として浸透していくことが理想なのです。
船井総研グループの「さん付け」文化は、単なる風通しがいい社風だけではなく、社員同士の尊重と信頼を築き上げ、満足度を高める重要な要素となってきました。この文化が今後も広がり続けることで、さらに多くの企業に良い影響を与えることを期待しています。